「いいか?アリシア。俺は日本語の勉強をするように言われてて、今はその勉強の真っ最中で……」


言い掛けた所で、グンっとアリシアに思い切り手を引かれ、つんのめる。


「でも、ピクニックは前から計画していた事だわ!天気だって……ほら!」


アリシアは、どんよりと曇った空を指差し、しまったとばかりに「コホン」とひとつ咳をする。


「……今にも雨が降りそうになってるけど……気持ちの持ち様だわ!
それに、ジョージが一緒に行ってくれないと淋しいもの……」


アリシアは、俺の腕に自分の腕を巻きつけると、上目遣いで


「一緒に来て?」


とねだる。



アリシアの必死さが笑える。



「……う~ん」


俺が渋っていると、アリシアはむぅっと膨れて、再度俺の手を強引に引く。


「いいわ。こうなったら……トンズラするしかないわ!!」

「えっ?!」


アリシアが懸命に俺の腕を引っ張る。


彼女のそんな必死さが可愛くて、俺は内心笑いを噛み殺しながら、ワザと仕方ないと言った顔で、彼女の誘拐に協力する決心を固める。



「仕方ないな。こうなったら猛ダッシュで逃げるぞ!」

「きゃーーーっ!」


アリシアの肩に腕を回しと笑うと、アリシアは嬉しくて仕方がないと言った笑顔で俺を見つめ返し、門を目指して一緒に駆け出した。