くそじじぃ、いや、ヘイワーズのじいさんは、俺に語学の習得を義務付けた。


訛りのない正統な英語の習得。

その上、フランス語、ドイツ語、ラテン語、そして、なぜか日本語。


……日本語って、一番、訳わかんねーし。


しかも、その日本語を教えるのが、日本から来たという大学生の『藤枝哲也(ふじえだてつや)』。


俺は今、不本意ながら、こいつ……フジエダの日本語の授業を受けている。


俺がどんなにピクニックに行きたいかを日本語でノートに綴っている間、フジエダは窓の外をぼーっと見ている。


ほっそりしてて、目がアリシアに負けないくらいクリクリして、最初紹介されたとき、15位に見えたけど……。

東洋人って年齢不詳だ。

これで俺より2つも上の19歳って言うから笑える。



しかも女みたいな顔だちして男だっていうんだから、こいつはナゾだ。


その上、スキップしてハーバードだって?


詐欺だろう。


「先生、出来ました」


俺が話し掛けてもフジエダは腕を組み、外に目をくれたまま、何の反応も示さない。


「先生!出来ました!!」


バン!と机を叩くと、

「え!?あ?ああ……。随分と早かったね」


フジエダは慌ててノートに視線を戻す。