「アリシア！飛び降りろ！」

「え？！ジョージ！何？何を言ってるの？」

「いいから、早く！飛び降りるんだ！！」


加速し始めた汽車が、アリシアを乗せたまま出て行く。

僕は慌てて汽車を追い駆ける。


「アリシア！危ないわ！！」


アリシアを連れに来ていた修道女が叫ぶ。


アリシアは身を乗り出すが、後ろから修道女がアリシアの腕を掴んで離そうとしない。

「いやよ！離してっっ！」

「キャッ！」

アリシアは彼女の手に噛み付きその手をすり抜けると、汽車の窓から顔を出しながら、後方へと移動し始めた。


「早く、飛び降りろ！！」


電車は徐々に加速を始め、僕たちの間の距離を徐々に広げて行く……。


「必ず抱きとめる！！だから飛び降りろ！！」


修道女は、慌てて、後ろからアリシアを追って来る。


ホームが切れるまで後、数メートルのところで、アリシアは窓に足を掛け、僕目掛けてジャンプした。

金色に広がった髪が風を含みふわっと膨らみ、キラキラとまばゆいばかりの光を放つ。


天使？！


一瞬、アリシアに羽が生えたような錯覚を覚え、僕は目を細める。



ドン！


と言う衝撃が走り、僕はアリシアを抱きとめるとホームを転がり、やがて止った。