「ありがとう、おじさん!」

銀髪の男が座っている後部座席に飛び乗った。


彼は一瞬、営業スマイルを湛えると、唇をヒクつかせた。


「どうか、バトラーとお呼び下さい、ジョージ様」

「分かったよ、おじさん!とにかく、駅へ急いで!」

「……バトラーでございます。ジョージ様」



黒塗りの車はアリシアを乗せた汽車の出発時刻スレスレに駅に滑り込んだ。



「ありがとう、おじさん!アリシアを必ず連れてくるから待ってて!!」

「了解いたしました、ジョージ様。
ですが、できれば、私のことは、バトラーと……。
おじさんではなくて……バ」


バンッ!!


僕は車から飛び降りると、勢いよくドアを閉め、急いでホームを目指した。


「アリシアーーーーーーー!!
アリシアーーーーーーーーーー!!」


構内に響き渡るくらいの大声で叫んだ時、丁度、アリシアが車両の進行方向前方の窓からひょこりと顔を出した。


「ジョージ?!」


アリシアの声に気付いた僕が急いで向かい掛けたその時、出発の蒸気を上げた汽車がゆっくりとホームから走り出し始めた。