「芹香。話を聞いて。俺は……」
拓哉がなにかを言いかけたとき、隣の彼女が拓哉の腕を掴んだ。
「拓哉。待って。……あれ」
「なに?」
彼女が私の背後を指さす。
「あ……」
拓哉は、なにかを確認したあと、黙り込んだ。
私はそんな彼をもどかしく感じ、話の先を促す。
「言いたいことがあるなら、……はっきり言って。私は……どうすればいいの?」
お願い。どうか、私だけだと言って。これはすべて芝居だと。彼女とは、なにもないと。彼女を好きだと言ったことの言い訳を聞かせて。
立っているだけで、やっとなの。崩れ落ちそうな私の身体を、早くその手で支えて。
「……分かったよ。はっきり言うよ」
しばらくしてから、顔を上げた拓哉の目を見る。
なにかを決意したような、澄んだ瞳。彼の真意が読めない。
「君とのことは……遊びだった。気付かなかったのか?」