『両社の後継者となります、お二人の婚約が発表され、それが合併に繋がったものとの見方もあり、今後の物流業界において、大きな影響を及ぼすものと思われ……』

まるで、金縛りにでもあったかのように動けなかった。
拓哉が……婚約?この人と?

ニュースの画面で見る笑顔と、昨夜の笑顔はなにも変わらない。
心に大きな鉛を投げ込まれたような感覚だった。

ずっと一緒にいると、彼はいつも言ってくれた。
こんなのは、事実じゃない。きっと、ただの芝居だ。そうでなければ、おかしい。そう自分に言い聞かせる。

私は、よろよろと立ち上がると、リモコンをテレビに向けた。ニュースが消え、黒くなった画面を見つめながら思い立つ。

拓哉に今すぐに会わなくてはならない。
彼の口からはっきりと、これは嘘だと言ってほしい。

そのまま夢中でコートを掴むと、部屋を飛び出す。雪の舞う中を、拓哉の顔を思い浮かべながら、ただひたすらに走った。