「じゃあ星野さん。我々はこれで失礼します。あとはこちらでやりますから」
拓哉は、泣き出した私をそっと抱き寄せながら、返事をする。
「はい。お願いします」
拓哉の周りにいた人たちは、不思議そうに私を見ながら、そのままこの場を離れていった。
「……芹香?大丈夫か?」
優しく耳元で囁かれ、髪を撫でられる。心地よさに目を閉じた。
ずっとこのままこうしていたい。そんなことを考えていたら、返事をしそびれた。
「芹香?……参ったな。……ここは人目があるから。俺の車に乗るか?話を聞くよ」
「え?……集荷に行かないと……」
私は顔を上げた。
「ん?ああ、行かなくてもよくなったんだ。実は運転手が一人、社に帰ってきていて。彼が帰着報告しそびれていたから誰もいないと思ってたんだ。仮眠も十分したみたいで、今から行ってくれるって」
私の真上にあるその顔は、優しい顔で私を見下ろす。
「ほら。大丈夫ならばもう泣かないで。……もう離してもいいか?こんなところを見られたら、また佐伯課長に叱られてしまうよ。彼に過去を知られたくないんだろ?」
私から離れようとする拓哉の腰に、咄嗟に自分からしがみつく。
「もう、なにをしても叱られたりしない。佐伯さんとは終わったから」
「えっ。……そんな。……俺のせいか?」
拓哉は、急にガッと私の両肩を掴むと、自分から私を引き剥がした。