「はい。彼女が責任を感じているようなので。今後の業務においても、一度現場を見ておけば、参考になる良い機会だと思いましたので、同行を認めました」

冷静な口調で答える拓哉を私は、はらはらとした気持ちで見上げていた。

「秋田さんは女の子だろ?危ないじゃないか。君は彼女になにかあったら、責任を取れるとでも言うのか!」

急に大きな声でそう言うと、佐伯さんは拓哉を睨みつけた。

「君ひとりの判断で、そんなことは許されない!」

「これは、彼女の希望なんです。俺は上司として、それを許可しました。責任は俺にあります。課長にはご迷惑をおかけしませんので」

「星野‼︎」

その声の大きさにドキッとする。
こんな佐伯さんは、見たことがない。

いつも冷静で、穏やかで、優しくて。
落ち着いた彼の笑顔しか、私は知らない。

「あの、私は別に…」

一緒に行くのは、やめた方がいいのかも知れない。
そのせいで、拓哉の立場が悪くなったらどうしよう。
もしもこのまま、佐伯さんが彼を許さなかったら。
そんな事を考えて、怖くなった。