向こうから歩いてくる佐伯さんが、片手を上げてこちらを見ていた。
驚きで固まる私とは違い、拓哉はにこやかに答える。

「はい。運転手がいなくて、急遽俺が行くことになりました」

「そうか、大変だな。気をつけて頼むよ」

佐伯さんがそう言いながら、視線を隣にいる私に向けた。
すると、その顔がみるみると驚いた表情に変わっていく。私が抱える大きな手荷物を見て、なんとなく状況を察したようだった。

「秋田さん?その荷物は……」

「あ……。私も行くんです。今回のことは私の責任なので。……すみません、今夜の約束はまたにしてください」

佐伯さんがなにかを言う前に、理由を告げた。

「……どうして……。……二人で行くのかい?」

「はい。あの、私も一度、実際の現場を見ておきたいのもあって……」

「星野くん。……君はそれを許可したのか」

佐伯さんの急に低く変わった声色に、ドキッとして私は話をやめた。