「秋田さんは、彼氏とかいるの?」
彼女が入店して数ヶ月が経った頃。
洗い物をしている芹香に、ふと聞いた。
「え……っ。どうしてそんなこと……」
真っ赤になって俺を見上げた彼女を見て、なんとなく感じた。
……この子は、もしかして俺を好きなのかも知れないと。
「いや。別に深い意味はないけど。ちょっと聞いてみたくなってさ」
自惚れているかも知れないが、もしも彼女が本気ならば思わせぶりな行動は控えようと思った。
俺は慌てて彼女から視線を逸らすと、なんでもない風を装った。
「彼氏は……いません。好きな人なら……」
自分で尋ねておきながら、気まずさを感じる。
核心に触れないよう、あえて軽く流した。
「そうか。ごめんな、変なことを聞いて。忘れて」
「はい……」