『きっ…今日からアルバイトに入る、秋田…芹香です…っ』
自己紹介で真っ赤になりながら、一生懸命に話す君を見たあの日に時を巻き戻せたなら。
『大好き、拓哉…。ずっとそばにいてね』
きっともう二度と、あの笑顔を消しはしない。
今さらそんな誓いを立てても、もう、君は俺を見てはいない。
***
「なあなあ、拓哉~。今日からの新人、芹香ちゃんだけどさ。可愛いよな。お前結構あのテのタイプ、好きだろ?純情お嬢系とでもいうか」
「ええーっ。拓哉はあんな子に興味ないわよね?ぶりっ子嫌いだもんね」
「ぶりっ子だなんて。彼女、可愛いじゃんかー。な?拓哉」
閉店の片付けをしながら仲間が話しているのを、適当な相づちをしながら聞き流していた。
タイプかどうかと言われれば、正直なところ苦手な感じの女性かも知れない。
これまでに付き合った彼女は、皆はっきりと、ものを言うタイプが多かった。
控えめな印象の女の子は、俺とは合わないものだと決めつけていた。
どう接すればよいか分からなかっただけなのかも知れないが。
芹香はまさに、俺が知らないタイプの女の子の方だと思っていた。