自分の言葉に、さらに泣けてくる。
人を心から愛すると、悲しみや切なさも訪れるのだと、初めて知った。幸せの真裏に、ひっそりと紙一重で繋がっている。

最近になって、新たな不安が私を苦しめ始めていた。

どうしようもなく怖いのは……彼を失った後の喪失感を味わうこと。
たまらなく怖かった。
拓哉を好きになればなるほどに大きくなる恐怖。

幸せなはずなのに。
彼が私をひとりにするはずがないのに。
どれだけ自分に言い聞かせても、消えない。

きっと、彼はいなくなる。……そんな気がしてならなかった。

「バカだなぁ。そんなこと、あるはずないのに。俺はいつだってここにいる。こうして芹香を抱きしめてる。ずっと」

なにを言われても、信じられない。
だいたい、そもそも拓哉に私は不釣り合いだ。
友達も、バイト先の人たちも、皆がきっとそう思っているはずだ。
もちろん、私自身も。

「拓哉。私の前からいなくならないでね」

「まだ言ってる。どうしたんだよ。そんなことはないから。泣かないで……笑って?」

彼の言葉に、またさらに泣けて、どうしたらいいか分からない。
ただ、私を温めるこの腕は、今は消えて無くなったりはしないのだと、無理矢理思い込む。

「好き…。本当に大好きなの」

「ははっ。分かってる。俺も好きだよ」

彼に絡まるようにしがみつく。
あなたを私のもとから連れ去ろうとしている、得体のしれないものへの不安は、日々大きくなる。どうしてそんなふうに思うのか、自分でもわからなかった。
このまま、二人で消えてしまいたいと思えるほどに、あなたが愛しい。そんな毎日を過ごしていた。