直接話したことはなくても、彼の人柄はよく伝わってきた。
私は気付かれないように必死で彼を見つめていた。
それはいつしか私の日課になり、彼を好きな気持ちは急加速で膨らんでいった。
駅前のフェアで初めて言葉を交わし、少しずつ話せるようになるまでに半年が経過していた。
「今の話は…本当なの?」
少し話せただけで、舞い上がり勢いづいて告白してしまうなんて。
本当にどうかしている。
この人を独占できることなど、あるはずないのに。
だけどもう、取り消せない。
このままバイトを辞めてしまおう。
彼に想いを告げてしまった今、困らせてしまうくらいならばそのほうがいい。
瞬時に覚悟を決めた。
もう会えなくなったとしても、ちゃんと気持ちを話せた。
それだけで充分な気がした。