そのうち、彼が優れているのは容姿だけではないことがすぐに分かった。誰もが慕う自分のことを、鼻にかけるようなことなどひとつもない。常に周りに気を配り、人のために行動する。
『星野くん、麻衣子もかおるも、みんなあなたを好きだって。一度私たちの飲み会に来てよ』
『本当に?好きだなんて、女の子が軽々しく男に言っちゃ駄目だよ。飲み会は機会があれば是非行きたいけど…』
『ほんと?絶対来てよ!』
彼に好意を寄せていると思われる子たちが、店に現れることは、これまでに何度もあった。
『だけど期待されてもなにもできないよ。俺はつまらない男だから、たいした話題もないし皆をがっかりさせるかもね。梶たちを誘ってあげなよ。出会いが欲しいって言ってたから』
『えー、いやよ。地味だもん。つまらなさそう』
大学の友達らしき女の子たちとの会話が店内中に響く。
『そんな風に言っちゃダメだよ。君は彼らのなにを知ってるの。梶たちと一緒ならば俺も行くよ。仲良くなれるよ、きっと。あいつらはみんな、いいやつらだから』
彼女たちは、お互いの顔を見合わせた後、しぶしぶ答えた。
『分かったわよ。じゃあ、そうする』
『よかった、ありがとう。楽しみにしてる』
そんな彼女たちに、満面の笑みを向けて、彼は嬉しそうに言った。
常に誰かのために、立ち回っている。
そんな彼から目が離せなかった。
オーナー夫妻が風邪を引いたときも、オーナーの子供さんの保育園の迎えを彼が買って出た。
『無理なさらないように奥さんにも伝えてください。祐太くんはそのまま俺が今夜は部屋に泊めますよ。彼にうつったら大変ですから』
『そうか。悪いな、星野。助かるよ、ありがとう。明日の朝に迎えに行くから』
『困ったときはお互いさまですよ。祐太くんと俺は親友なんです。一人暮らしも寂しいので、ときどき相手してもらいたいんです。今夜は祐太くんをお借りしますね』
オーナーに気を遣わせないよう、きちんと配慮した言い方をする。
それが、星野さんだった。