「大変だろうけど頑張れよ。星野くんが、プロジェクトメンバーは君がいいと駄々をこねた意味がなくなる」

えっ。

足を止めて、拓哉の方を振り返った。

「すみません。決して下心はないですから。課長の大切な人をこき使うのは、あくまでも仕事ですからね。デートの時間が減ったと言って、俺を恨まないでくださいよ。業務内容的に、流通業者に詳しい秋田さんが一番適任だと思ったんです」

顔に微かな笑みを浮かべ、涼しい顔で平然と言う拓哉が分からない。

「なんだよ、君まで。俺は公私混同はしないよ。しっかり指導してやってほしい。むしろばんばんしごいてくれよ。な？秋田」

側にいた私の頭をぽんぽんと軽く叩きながら、佐伯さんは笑った。

そんな佐伯さんとは対照的に、私たちを交互に見る拓哉の顔に、先ほどの笑みはもうなかった。