「いえ…そんな訳じゃ…」

私はそっと起き上がり、身体を隠すようにシーツを巻き付けた。

「俺は君が好きだよ。大切にしたいからずっと待ってた。君がまだ、そんな気持ちになれないのならどうか無理をしないでほしい。朝まで過ごすのは、まだ嫌だとはっきりと言ってほしいんだ。俺はまだまだ待てるから」

傷付けた。前回よりももっと深く。
彼の瞳の奥に、悲しげな揺らめきを見たような気がしてそう感じる。

「本当にごめんなさい。私、なんて言ったらいいか」

「何度も謝らないで。いいから」

ベッドにそっと座り、私の隣に来た佐伯さんが私の頭をふわりと撫でながら微かに笑う。

「もう、終わりにしたいと思ったのならばそう言ってください。私は構いませんから。こんな風に佐伯さんを振り回すつもりなんて無かったのに」

涙を堪えながら言うと、彼は私の頭を撫でる手を止めた。

「終わりでも構わないだなんてひどいなぁ。芹香ちゃんはそれでいいの?」

「だって」

「今日のことはもういいよ。この話はもうおしまい。チャンスはこれからだってたくさんあるだろ?」

そう言われて、ふと思う。
これから。
あるのだろうか。
佐伯さんに抱かれてもいいと思える日が、この先の未来に果たして本当に来るのだろうか。