『遠慮しないで。俺がなにかを贈りたいんだよ』

俺が言うと、芹香は目を天井に向けた。

『あ……、あったわ。ひとつだけ』

『なに?服?アクセサリー?』

興味深く聞き返すと、視線を俺に戻して言った。

『……拓哉の未来。ずっと一緒にいたい。願うのはそれだけよ』

結局その直後に、俺は芹香を腕に抱くことはなくなった。
甘い余韻を俺の全身に残したまま、跡形もなく消えてしまった芹香の感触に、それからずっと苦しめられた。

日増しに愛しさが募る中、いつしか自分の心を守る術を学んだ。
だがそんなものは、君を見た瞬間に壊れて消えた。
ただ欲しい。再び触れたい。そんな欲求と闘ってきた。

「今なら……芹香が欲しがったものを渡せる。ようやく……」

呟きながら、目を閉じてその額にキスをする。

「……私の欲しいもの……?」

目を開けて彼女を見ると、輝く瞳が俺を見つめていた。

「……起きたのか。ごめんな。辛いか?」

尋ねると、彼女はクスッと笑った。

「ううん。……嬉しい」