すると、彼女が咄嗟に俺の手を掴んだ。
「……コーヒーは後でいい。離れて行かないで。……そばにいて」
俺はそのまま彼女の隣に座り、その身体を抱きしめた。
「本当に……戻れるのね。夢みたいで、信じられない」
俺は言葉にならずに、身動きできないでいた。
これまで、どれだけの不安を君に与えたのだろう。
君は何度、涙を流したのだろう。
そんな苦しみしか感じさせなかった俺を、君はこうして受け入れてくれた。この先、どうやって償っていけばいいのだろう。
「芹香。これからは、君を大切にする。今さらこんなことを言っても、君は俺を信じきれないかもしれない。……だけどこれだけは言わせてほしい。……ずっと、君だけだった。愛してた……」
俺の言葉に、彼女がコクコクと小さく頷く。
胸がいっぱいになり、彼女の髪をそっと撫でた。
ようやく俺の腕に帰ってきた君は、あの頃と変わらず痩せていて、俺がそばにいないのに、これまでどうやって過ごしてきたのかと思わせるほどに甘えた様子を見せる。
俺の胸に顔を埋め、俺の背中に手を伸ばし夢中でしがみついている手が、微かに震えている。