そのまま俺の部屋に入り、ソファに座った芹香の背後から声をかける。
「駅前カフェのコーヒーを淹れようか」
振り返り、彼女は嬉しそうに微笑む。
「うん。懐かしいわ。この前、飲みそびれたから」
そのまま後ろから彼女を抱きしめ、耳元で囁く。
「やり直そう。出会ったときから。カフェに立ち込めるコーヒーの香りの中……君は、全身で俺を求めていた。それに気づかないふりをしたのは、そんな芹香が可愛くて堪らなかったからだよ」
「そうよ。ずっと見ていた。意地悪ね。……告白するときは、本当に怖かったのよ。拒絶されたらどうしようって」
耳にキスを落とす。
「ごめん。君に言わせてしまって。だけど今は、俺のほうが芹香を好きだ。怖いほどにね」
「待って。あの頃から私のほうが__」
反論しようとしている唇にキスをする。
彼女の声が、瞬時に吐息に変わる。
そっと唇を離してその目を見ると、うっとりとした視線を向けてくる。
そんな君が可愛くて、もっとキスをしていたいけれど、コーヒーを淹れようと彼女の身体から離れた。