「ここじゃダメよ。ちゃんと……ふたりきりになれる場所に行きたい」

はやる気持ちを抑えきれない。
探して求めて、ようやく掴んだあなたの温もり。
人目など気にせずに、溺れるほどに感じたい。

「俺の気持ちは、ずっとあの日のイルミネーションの中にあった。前に進めなくて、苦しかった」

そう言って拓哉は、私の手をあの日と同じように、スーツの上着のポケットの中にそっと入れた。

「温かい……」

拓哉に突き放され、地面に座り込んで泣いた冷たさを、私はこれからもきっと、忘れることなんかできない。
だけどこれからは、あなたがいる。
たとえ心と身体が冷えて、凍えることがあっても、きっとその笑顔が瞬時に私を温めてくれるから。
怖いものなんて、もうないのだ。

ポケットの中で指を絡ませ合いながら、私たちはゆっくりと歩き出した。
これから先の遠い未来も、こうして彼が隣にいることをようやく実感できた。