身体を離して、彼の顔を見上げる。
そんな私を見下ろすのは、いつも愛しそうに私を見て愛情を滲ませていた、潤んで綺麗な目。

「その目で……見つめて欲しかった。ずっと願ってきたの」

呟きながらその顔に手を伸ばす。その私の手を、顔に触れる前に彼のキスが捕らえる。そのまま彼の熱い手が、ぎゅっと握って頬を寄せる。

「俺も、いつだって芹香を愛してた。感情を抑えるのに必死になっていた。気を緩めると……こうして触れたくなるから。苦しかった」

あなたを忘れるために、必死で誰かを好きになろうとしていたけど、すべてが無駄なことだった。
こんなに愛しい人を、忘れるなんてできない。

だが、ふと思う。
「理恵子さんをひとりにしても……?」

胸の痛みと闘いながら、彼女は壊れた恋心を抱えている。最後に見た後ろ姿が、昨日までの自分と重なり、私も苦しくなっていた。

「理恵子は……大丈夫だ。運命が心を支配していただけだ。俺以外の男を好きになってはいけないと思い込んでいたんだよ」

「でも……」

さらに言おうとすると、突然唇を塞がれた。

「ちょ……」

誰かが通らないかと気が気でない。

「ダメ……っ」

拓哉の胸をぐっと押して、その唇から逃れた。