しばらくそのまま、拓哉と彼女の後ろ姿を見つめていた。
会社を守るという理由の陰に隠れていた、彼女の本当の気持ち。それは痛く切なく、拓哉に向けられていた。
彼女はただ、真剣に恋をしていただけだった。私と同じように。
「あの……拓哉」
私は改めて出直したほうがいいのかもしれない。理恵子さんをこのまま、ひとりにしてもいいのだろうかと考える。
彼女の気持ちが、痛いほどに分かるから。
「私、今日は……」
そう言いかけると、振り返った拓哉が突然、私をガバッと抱きしめた。
「きゃっ。た、たく……」
「ごめん。……ずっと、謝りたかった。君を何年も苦しめて、悲しませた」
彼の言葉が、胸に染みていく。
一瞬驚いたが、次の瞬間には、私は彼を抱きしめ返していた。
「苦しかった……。でもね、だからこそ、拓哉がいないとダメだと分かったの。私、抜け殻みたいで、全然ダメだった」