「あの頃、いつも君に伝えてきたよね。君を離したりなんかしないと。信じてくれていると思っていたのに」

一歩ずつ、私に近寄る彼の動きに合わせて後ずさりする。

やめて。
もう、心をかき乱さないで。

「異動願いを出すことになると思うわ。拓哉と仕事なんてできないから…」

そう言うと、彼の動きが止まった。

「やっぱり信じてもらえないんだね」

潤んだように輝く瞳が寂しげに光る。

胸の奥がズキッと痛んだ。

「今さらもう、傷つきたくはないのよ」

彼から目を逸らして呟くように告げた。

「そうか。……分かったよ。もう、…過去の話はしない。だから、異動願いは考え直して。同僚として一緒に頑張りたい。せっかくこうして再会できたから」

彼を見上げると、悲しげな表情のままふわりと笑った。