「説得だと？お前、やつらになにを言った!?あと少しで叶うはずなのに。星野の息子と花木の娘が、結婚さえしなければ」

「ああ。彼は結婚はしないだろう。ここにいる芹香さんが好きだからね。だがそんなことは関係ないんだ。米永倉庫自体が、経営不振なんだから。だから父さんは、北陵エクスプレスを欲しがったんだろう」

私と由衣さんは、驚いて慶太さんを見た。

「今までなんとか持ちこたえてきたが、米永倉庫は時間の問題だ。むしろいっそ、従業員を北陵エクスプレスに移籍させてもらえるよう、頼んだほうがいいだろう。ついでに、父さんも一緒にね」

「やつらの傘下に入れと言うのか！」

叫びながら、黒田社長はガクッと床に膝を付いた。

そんな父親に寄り添うように、慶太さんもしゃがみこむ。

「父さん。花木のおじさんたちなら、あなたを助けてくれる。昔からの親友で、一緒に頑張ってきたんだろう。謝って許しを請うんだよ。奪うような真似はやめて、彼らの事業拡大に協力したらいいと思うよ。それが結果的には、あなたのためにもなる」

冷静に諭すように話す息子を、黒田社長は赤い目で見上げた。

「そんなこと……お前に言われなくても、途中から気づいてるんだ。だが、引き返せなかった。それに、彼らは俺を許さない。許すはずなどないだろう」