「どこに……」

私が言うと、由衣さんも立ち上がりながらニコッと笑う。

「正直になりに。あなただけじゃなく、私たちもね」

意味が分からないまま、私も歩き出したふたりに付いていく。

このままではダメだ。私は変わらなくてはならない。
このふたりのように、拓哉との間にあるものを飛び越えてみたい。
そんな気持ちで、自分を奮い立たせた。



「着いたよ。じゃあ降りて」

黒田さんの車に乗ってたどり着いた場所は、米永倉庫本社ビルだった。
言われるがままに降りて、恐る恐る中へと入っていく。

勝手知ったる様子で歩く彼に、由衣さんとともに付いていく。

「慶太さん。どうしたのですか」

そのとき、彼に声をかけた人物を一斉に振り返った。

「植田か。父さんに話があるんだけど」

背の高い、眼鏡をかけた男性。
黒田社長と一緒にいた秘書の彼だとすぐに分かった。

「そうですか。では、応接室でお待ちください。お呼びして参ります」

そう言って向きを変えた瞬間に、彼がチラッと私を見た。
その目は、慌てた様子も驚いた様子もなく、その感情は読み取れなかった。