由衣さんは、話しながら悲しげな表情になる。

「あなたが、合併披露会が終わってから消えたとき、拓哉は段々と表情を失くしていったわ。笑う意味さえ持たなくなった。あなたの存在が、彼を支えていたの」


私はずっと自信がなくて、私ばかりが彼を好きなんだと思ってきた。私が求めるから、応えてくれているのだと。

「しばらく、黒田社長が拓哉に張り付いていた。あなたの元へも行けずに、会えなくても、じっとあなたを信じて耐えていたの。そんな拓哉を残して、あなたは姿を消した」

私は顔を両手で覆った。
拓哉を信じきれなかった。捨てられるのが怖くて、彼から逃げ出した。

「誤解しないで。あなたを責めてるわけじゃないわ。無理のないことだったの。だけど私は、拓哉の気持ちを知ってもらいたいだけ。また、同じことを繰り返すの?今の拓哉の気持ちを知りもせずに?」

両手を顔から離し、彼女を見る。
真剣なその眼差しは、まるで私を射抜くようだ。

弟の幸せを願う、彼女の気持ちが伝わってくる。

「よし。じゃあ行きますか」

ずっと黙って話を聞いていた黒田さんが、急に立ち上がった。