応接室を出て、自分の課へと向かう。

すべてを割り切ってリセットし、目の前の業務にのみ没頭する日々を、心の中で静かに誓う。

芹香のことも、単なる部下として扱う。それ以上でもそれ以下でもない。
そんなふうに思えるようになれるまで、どれほどの時間がかかるのかは分からない。
だが、特別扱いするのは理恵子にだけにしないとならない。

「主任。今日の便が上がりました。少し早いですけど、もう運転手が車両点検に入っています。今日は、五百才の機械なので、クレーン車が補助で同行するんです」

デスクに座ると芹香が、まるで自分ひとりでやり終えた難しいケースの便を褒めてもらいたいかのように話しかけてきた。

「おお。状況判断が完璧じゃない。よくやったね」

彼女の期待通りの返事をする。

「はいっ」

嬉しそうに目を輝かせる彼女の頭を、思わず撫でていた。

ハッとなり、手を引っ込める。

「ごめん。頑張った君を見てつい」