廊下を歩きながら、頭がだんだんと正常に戻っていく。
私は変わらないといけない。
拓哉に振り回されていてはいけない。
「変わってないね、芹香。ずいぶん素っ気ないじゃないか。久しぶりに会えたのに」
大きな観葉植物の陰から声がして、驚いて足を止めた。
振り向くと、壁に寄りかかってこちらを見る拓哉がいた。
「あ…」
「偶然だね。同じ会社で同じ課になるなんて。しかもアシスタントだって。驚いたよ」
何を言えばいいのか分からない。
彼を目の前にすると、頭が真っ白になってしまう。
「………なんてね。そう言うと思った?偶然なんかじゃないよ。ここに君がいることを知って追いかけてきたんだ」
「う……嘘よ。そんなこと、あなたがするはずなんてないわ。私になんて二度と会いたくはなかったでしょ」
思考よりも先に、口が勝手に動いた。
「ははっ。そう。今のは冗談だよ。だけど、会えてよかった」