応接室のドアをノックすると、中から声がした。
「企画課の星野です」
「入りなさい」
言われるがままに中に入る。
「花木副社長。いらしていたんですか」
普段は本社にいる社長である父と、支社にいる副社長。そして、先ほどこちらに着いた理恵子がそろってこちらを向いた。
「やあ、拓哉くん。プロジェクトに立候補したらしいね。順調だと聞いてるよ。さすがだね」
「いえ、そんな。まだ始まったばかりですから、これからですよ」
にこやかに決まり文句のような社交辞令で話してくるが、花木副社長の話の本題はそこではないだろう。
「今日はどのようなお話ですか。……まだ業務を残してるんですが」
話に入りやすいように、こちらから振る。
「まあ、座りなさい」
父が、応接セットの空いた場所を指し示す。
素直に従い、ソファの理恵子の隣に腰を下ろした。