今夜、改めて会えば教えてもらえるのだろうか。
「はい。……じゃあ、六時に行きます」
身なりや仕草からは、怪しい雰囲気は感じない。
むしろ、上品なイメージさえ醸し出している。そんな人が、どうして出会ったばかりの私を誘ったりするのだろう。
拓哉の知り合いなのかもしれない。
色々考えるが、何も分からない。だけど、このまま知らん顔もできない。
「いい覚悟だ。安心して?俺は女に不自由してる訳じゃない。君をどうにかするつもりなんてないから。ただ、話してみたいだけ」
首をかしげた私にニッコリと笑うと、彼は私の頭をポンポンと優しく叩く。
「楽しみにしてるよ。芹香ちゃん。じゃあね」
エレベーターの『開』のボタンを押し扉を開けると、彼は颯爽と去っていった。
その後ろ姿を見ながら呆然とする。
彼との出会いの衝撃に、拓哉と理恵子さんのことを考える余裕もなくなっていた。