実際、彼を目の前にして自分の気持ちを再認識する。
時間は彼の記憶を連れ去ってはくれなかった。
あの頃と変わらずに、今も愛しているのだと実感する。
だけどこんな想いを抱えていても、苦しいだけだ。
佐伯さんと、拓哉に挟まれて仕事なんてできるはずがない。
異動願いを申し出たほうがいいのかもしれない。
急にそう思い立つと、私はトイレから出て佐伯さんの元へと向かうために歩き出した。
思い出にすがって、夢見るように彼を見つめながら過ごすのは嫌だ。
拓哉にとっても迷惑なことだろう。
拓哉にはもう、私に対する気持ちなんて少しも残ってはいないだろうから。