「もっとよく……顔を見せて。忘れたくない。離れたくないんだ。ずっと……こうして、いつまでも見ていたいのに……」

俺の目からこぼれ落ちた涙を、芹香の震える指がそっと拭う。

「拓哉が北陵エクスプレスの後継者だと聞いたとき……私たちの間には、未来はないのだと分かったの。……それまでは、なにがあっても諦めない覚悟だったのに。あのときもうすでに、こうなると分かっていた」

芹香の目にも、みるみるうちに涙が溢れ出し、それがこぼれて床に落ちた。

「どんなに愛しても……長い間求め続けてきても。……抗えないことってあるのね」

そっと彼女を抱きしめる。
その身体は、何にも代えがたい愛しさを放ちながら震えている。

「嫌だ。嫌なんだ。……失いたくない。あの日からやり直せたら」

脳裏にあるのは、イルミネーションの輝き。
寒く、彼女の凍えた指を、俺のポケットに入れて温めた。
過去の日々を頭の中で再生するたびに、言いようのない後悔が襲ってくる。