「大丈夫か。もういいの?」

さっと目を逸らし素っ気なく聞くと、彼女が答える。

「はい。すみません、ご心配おかけしました。佐伯課長が優しくして下さったのでなんとか……」

彼の名前を聞いて、一瞬身体がピクッとするが何ごともないかのようにふるまう。

「じゃあ早速だけど、この表から計算してくれるか?運賃表はソフトに入ってるから」

「はい」

彼女は、素直に俺の指示に従う。

俺への気持ちなど、初めからなかったかのように見えて、胸がドクッと揺れる。

どうしてそんなに平然としているんだよ。
少し泣いたら納得したのか?
もっと動揺して、悲しげな目をしながら俺を見ろ。

今ここで、俺の結婚が嫌だと喚いてもいい。
そしたらすぐに抱きしめるから。君だけだと言うから。

「秋田さん。……俺になにか言いたいことは?」

もう、我慢の限界だ。
思わず尋ねていた。