「君の心の奥にあるものに、ずっと怯えていた。それはきっと、君の正直な気持ちだろう。そんな君が、星野くんにとっての大切なものを、知りもしないで決めちゃダメだ」

私は、泣きたくなるのをグッとこらえた。

「だけど……もう……。彼は私と目も合わせなくて。きっと、迷惑に思ってるから」

「本当に?あのときの彼の目。俺を睨むあの眼差しは、決して冗談には見えなかったけどな。彼はきっと__」

「秋田さん」

そのとき、突然名前を呼ばれて振り返った。

「書類は届けてくれたの?検印はもらえた?君はここでなにをしてるの」

拓哉が腕を組んで、睨むようにこちらを見ている。

驚いて返事をしそびれていると、佐伯さんがヒソッと私の耳元で囁く。

「待って、このままなにも言わないで。彼の気持ちを確かめてみようか」

私は彼から目を離し、佐伯さんを見た。
佐伯さんは、悪戯な笑みを一瞬私に向けると、急に真剣な顔になり拓哉を見た。