「え。……ふたりでですか」

思わず聞くと、彼は眼鏡を外して私のほうを向いた。

「うん。……どうして?」

驚くほどに無表情な彼と目が合う。

「い、いえ」

自分で聞いておきながら、私のほうが目を逸らした。
彼も、そのままなにも言わずに眼鏡をかけ直すと、再びパソコンへと向き直る。

朝から交わした言葉は、挨拶と仕事のことだけ。
彼がなにを考えているのか、私はどうしたらいいのか、さっぱり分からない。

やはり、なかったことにしたいのだろうか。
思いがけず理恵子さんが現れて、改めて現実を見たのかもしれない。

「私、物流課に運行表を届けてきます」

それだけ言って立ち上がった。

「ああ。ありがとう」

私に視線を向けることすらない彼を横目に見ながら、私は部署を出た。