「そんな。君は、ふりだけだという話に納得していただろ?」

「初めはそのつもりだった。でも、気づいたの。拓哉を忘れてなんかないんだと」

「待って。頭が混乱して……」

芹香を見る。

その目には涙が溜まり、今にもこぼれ落ちそうだ。

「芹香。俺は知らなかったんだ。本当に__」

なんと言えば信じるだろう。
ようやく君をこの腕に抱いたことが、泣きたくなるほどに嬉しかったのだと。

「やっぱり……こうなるのよね。私は……本当に、心から拓哉が好きで……。でも……」

芹香の目から、とうとう涙が流れ落ちた。

「もう……いいわ。分かった。分かった……から」

芹香は、呟くように言うと、突然走り出した。

「待って!芹香!」

追おうとした俺の手を、理恵子がグッと掴む。

「ダメよ!拓哉。あきらめて!会社がどうなってもいいの?」