「ち…ちょっと待って…。やっぱり私…」
ギュッと目を閉じて絞るような声で訴えた。
「やっぱり…なに?無理なの?」
私の首筋からそっと唇を離して彼が私の目を見つめる。
「あの、ごめんなさい。私…」
彼とホテルまで来ておいて、今さら拒むのは実は二度目のことだ。先週にも同じことがあった。
この恋はきっと今日で終わる。おそらく終わりを告げられてしまうと思った。
私が彼の立場だったならばそうするだろう。
そんな風に相手に思わせてしまう、自分の不甲斐なさに情けない気持ちが溢れ出す。
「はぁ…。そうか。分かったよ」
彼は呟くように言うと起き上がり、床に落ちた下着を拾う。
そんな様子を、ぼんやりとベッドの上から見つめる。
どうしてうまくやれないんだろう。
彼を好きだと確かに感じてここまで付いて来たのに。
「…芹香ちゃんは、こういうことはまだ…なの?」
ワイシャツのボタンをとめながら佐伯さんは私を振り返った。