名前、呼んでくれた。
私に声をかけてくれた。
たったそれだけのことなのに、すごく喜んでいる自分がいる
「・・・お釣り忘れてる」
彼は一言そう言ってお金を渡し、レジに戻った。
様があったから仕方なく呼んだんだってわかってる。
それでも彼の口から私の名前が出て、
彼の目に私が写って、
彼がほんの少しだけど私に触れてくれた
それだけでこんなにも嬉しいの。
余韻に浸るかのように、コンビニのすぐ近くの公園のベンチに座る。
思い出すだけで幸せな気持ちになってしまう。
今までの辛いことなんてなかったかのように。
だけど・・・
彼には、あんなにも可愛らしい彼女がいるんだよね。
昨日のことを思い出してサッと熱が引いた。
そうだ。
私は頭を冷ましに来たんだ。
なにしてるんだろう、本当に。
とりあえず、落ち着こう。
深呼吸を何度かして、ベンチから立ち上がる。
「帰ろう」
そうつぶやいて、家の方へ向かった。
家の方向に足を進める。
しばらく歩くとあることに気づいた
(後ろの人、着いてきてる・・・?)
確実じゃないけれど、方向があまりにも一緒だから。
確かめるためにぐるっと回って同じ道に出てきたけど、その人も着いてくる。
・・・こわい。
私はさっきよりペースを上げて家へ向かう。
後ろの足音も早くなった気がする。
こわいこわいこわい。
怯えながら門に入ろうとしたとき
グイッと右腕をつかまれた
・・・やばい。