瞬間。
サァッと春の風が吹き、私の長い髪を軽くなびかせた。




…………何それ。


馬鹿らしい。
ホント、笑っちゃう。


露骨に笑みがもれてしまう。


「葉月ぃ、それまじでゆってんの?」


飲んでいたイチゴオーレのストローを口から離し、そう言った。


四月。

高校入学したての私たちは、オソロイの制服に身を包み、学校に向かって歩いている。


その道中、親友の葉月がいきなりそんなこと言い出すから…
もうビックリ。


「まじまじ! 紅花にはわかんないかぁ」


葉月は、目を見開いてそう言った。
……と思えば、少し残念そうな顔も見せた。


わかるわけないじゃん。


だって、恋したこともないし?
なんたって、恋愛経験0だからね。