「椿はあのクソ野郎に抱かれてるたび殺されてんだぞ。なのに傷害って何だよ……今だって脅えてるっつーのに!」


顔を歪める獅朗に、
感情を剥き出しにする獅朗に、
もう、良いと思ってしまう。


確かにアイツに抱かれるたびにココロが死んで行った。
最初にあった、嫌悪感や恐怖さえ最後はなくなり、何も感じなくなっていた。
アイツの指使いも吐息も体温も……


ただの人形。
それが終わるまでただ天井を見つめるだけの人形。


だけど、獅朗が私のことをこんなに想っているのを知れば、獅朗には笑っていて欲しいと思ってしまう。
私のことで、獅朗が辛い思いをして欲しくないと思ってしまう。


「まっ、そうだな。椿ちゃんはどうしたい?」

「どうしたいって……」

「告発すればさっきも言ったように傷害かなにかしらの罪にはなる。けど、刑は椿ちゃんがされていたことを考えると軽いって言うのが現実だよ。そして、今の話を裁判でしなくちゃいけなくなるかもしれない。それでも告発する?」

「……」

「俺の意見を言わせて貰えば、告発をすれば椿ちゃんが勝つよ。だけど、代償が大き過ぎると思う。椿ちゃんが被害者なのに、この話をマスコミが書けば、被害者のはずなのに加害者と同じような生活をするようになる」

「……じゃあ、どうすれば、」


会田さんはニヤリと笑って、ネクタイを緩めソファーに背中を預け獅朗へと視線を向けた。