「こんなだけど、頭はキレるのは確かだから」


私の胸の内が分かったのか、獅朗がそう言うとソファーに座ったから、私も頷いて獅朗の隣に座った。


「さわり程度しか聞いてないんだけど、愛子ちゃんのお父さんのことで良いんだよね?」


会田さんの表情が変わる。


「……はい」

「言いずらいだろうけど、ちゃんと全部隠さず話して欲しい」


真っすぐ私に向けられている力強い瞳を私は見つめ返し頷いた。


「じゃあ、俺は向こうに行ってる」

「あっ、」


立ち上がろうとした獅朗の腕を掴んだ。


「獅朗も居て、欲しい」


獅朗にも全部聞いて欲しい。
学に言えなかった分も全部。
獅朗に取って荷が重いのは分かってるけど……


獅朗はポンポンっと私の頭を撫でて「分かった」と優しく見つめてくれた。


フゥーと息を吐いてゆっくりと瞳を閉じ、
ずっと……ずっと……
奥に閉まっていた記憶の箱を開けた。