「それだけかよ」


車に戻ると幸二と同じことを口にする獅朗。


「これだけ」

「じゃあ、もう良いな?」

「うん」

「じゃあ、帰るか」

「うん」

「夜にさっき話した会田さんが来るから、俺に話した話しをしろ」

「え?」

「大丈夫だ。俺も一緒に居る」


出来ればもうあの話しはしたくない。
話せば当時を思い出して吐き気がする。
体から血の気が引くように、体がガタガタと震え出す。

そこに居ない相手に怯えてしまう。


「椿、大丈夫だ」


ギュッと私の肩を抱き寄せ、今にも震え出さはそうな私の体を獅朗が力強く抱きしめてくれた。
そっと獅朗の背中に腕を回し、獅朗の服をギュッと握り小さく頷いた。