嵐が言うことはもっともだ。
獅朗の気持ちに答えられないと言いながら、獅朗を突き放すことは出来なかった。
獅朗の優しさに甘えていた。


そっと左肩に触れた。
いつからか、不安になると左肩に触る癖がついてしまった。

『大丈夫』

自分に言い聞かせるように、不安な気持ちを打ち消すように。


先に進みたい。
けど、それが学を忘れてしまいそうで怖かった。
だから、進みたいと思っていても、学への想いが強ければ強いほどその場から動くことが出来なくなっていた。


この件が終わったら、獅朗からは離れよう。
それが一番良い。


私は学を想い続ける。
獅朗と約束したように学校へ行き、また今とは違う世界を生きて行く。


獅朗は私と出会う前の世界に戻る。


ただそれだけだ。
接点がなくなれば住む世界も違ってくる。