「迷惑なんて思うなよ」


獅朗がポンっと私の頭を撫でた。


「ちょっと出てくる」


獅朗もそう言って部屋を出て行ってしまい、部屋には嵐と私の二人だけ。


「あの後大変だったみたいだな」

「あっ、うん……ごめんね。嵐はまだ怪我治ってないのに」

「調度良かったよ。あの家に一日中居たらおかしくなるからな」


きっと母親のことを言っているんだろう。
理由は違っていても私も同じだった。


「逃げ出したくならないの?」

「なるよ。俺にだって感情があるからな。でも、俺の世界はあの家だけじゃないから」


同じだけど私と嵐は違う。
私は逃げ出したけど、嵐は逃げ出さずに向かい合ってる。