「じゃあ、ずっと知ってて黙ってたの?」

「無理矢理話させても意味がねーって言ったろう?それに全部奪ってやるとも言ったろう?何だよ。忘れたのかよ」


口角を上げ、深い暗闇を抱える瞳が優しく弧を描き私を見つめて来る。


忘れてない。
全部……覚えてる。

獅朗の温もりも、真っ直ぐな瞳に本当に奪われそうになった時の体の震えも。


「今日は良く泣くな」


私の視界に居る獅朗がそう笑っている顔が滲んで行く。


「椿。助けてやる」


嘘のない獅朗の言葉に私は頷いた。
獅朗はすぐに誰かに連絡を入れた。
口調からHeavenのメンバーじゃないと言うことだけは分かった。


何もない獅朗の部屋。
獅朗の声だけが響いている。