見つからないように、とっさにシートに隠れるように身を縮めた。

カタカタと震え出す体。
ハァハァと荒くなる呼吸。
ツーっと背中に流れる嫌な汗。



「椿?どうした」



獅朗の言葉は聞こえているけど、それに答える余裕がない。
たった一言"父親"そう言えば良いだけなのに。



「椿?」


焦りと動揺で涙が溢れてくる。
獅朗はそんな私をギュッと抱きしめ「どうした?」と優しく声をかけてくれた。


「もう着くから」


私は首を横に何度も振り、嫌だと言う意思を伝えようとした。
ギュッと獅朗の服を握り、嫌だと言う意思を伝えようとした。


「何だよ。どうしたんだよ」

「か、え……な、い」


絞り出すような声は言葉になっていなかったけど「俺の部屋に来るか?」と獅朗は言ってくれた。