「椿、」


まだ涙が止まらず、涙を拭いながら「何?」と嵐に視線を向けた。


「わざわざ、ありがとうな」


そう言う嵐にまた涙が溢れる。


私が頷くと獅朗がポンポンと頭を叩き「邪魔したな」と私の肩に腕を回した。


「気をつけて」


嵐はそう言って部屋から私達を見送ってくれた。


階段を降りて行くと嵐の母親が「あら、もう帰るの?」と笑っている。


その笑い顔に怒りで吐き気がする。
嵐があんな思いをしているのに、笑っている神経を疑う。


「ちょっと予定があるんで」

「そうなの。また、遊びに来て達也も喜ぶから」

「はい。じゃあまた」