「ブリミエル卿。レデオン卿と私が二人だったと、
どこからそんな話を聞かれたのか?
レデオン卿が倒れたのもつい先ほどのこと。
事の詳細を把握されるのが早すぎるような、、
まるでご存じだったような早さではありませんか?」
扉に立つブリミエルにフランツの薄く青い瞳が
刺すように向けられる。
「レデオン卿が毒に倒れたことも、
私はつい先ほど侍医から報告を受けたばかり。
そのこともご存じとは、、もしや
すでに何の毒だったかもご存じなのか?・・まさか!」
フランツがわざとらしい声で言う。
ブリミエル卿の顔がひきつる。
「卿に私たちが二人だったと告げたものは誰か?
その者達に後ろで糸をひく者がいるのでは?!」
「なるほど!」
アイザックが相槌を打つ。
「ではその者達を即刻捕らえ問い詰めましょう!」
ウェルスターとアイザックがブリミエルににじり寄る。
「ブリミエル卿、その者達は今どこに?!」
「ブリミエル卿!」
屈強な男たちに詰め寄られ、額に汗をにじませるブリミエル。
「い・・いや、私はですからこうして
皇子様のお話を伺いに来たのであって・・。」
「聡明な貴殿のこと、私ではないとお判りで、それを確かめに来られたのでしょう?
二人きりの時に相手をどうにかするなど、すぐに明るみに出るようなこと。」
フランツの凛とした声がブリミエルの反発を打ち消した。
聞く者に響いてくる声だった。
ディアナの全身にもぴりぴりとフランツの声が響いた。
「それに、」
フランツが後ろに隠していた、頭から布をすっぽりかぶった人物を胸に抱き入れる。
皇子のほうを向かされていて、他の者には姿が見えない。
「あの場所に私はひとりではなかった。」
ディアナの身体に回された皇子の腕にぐっと力がこもる。
あ・・。ディアナは息をつまらせた。
皇子の胸にぎゅうっと抱き入れられ、皇子の香りを吸いこんでしまった身体が奥から火照ってくるようだった。
≪いやだ、離れなきゃ…≫
あらがおうとするが、右腕が痛くて、片腕だけでは逃れられない。
「逃げないで。」
顔をちかづけ、囁くようなフランツの声がした。
さらさらとやわらかな金色の髪がディアナにふりかかる。
フランツの唇がそっとディアナの額に触れる。
やわらかな感触。
大きな瞳をさらに見開いているディアナの頬をそっとなでる大きな掌。
「私はこの娘にほれ込んでいてね。
愛しくてたまらない・・。片時もそばを離れていられない・・。
レデオンとの話し合いにも、この娘を同席させていたのだよ。」
フランツが口元をあげる。
「レデオンもすごく驚いていたよ。私の溺愛ぶりにね。」
愛おしそうにその娘を両腕に抱きしめる。
「何、、何を申されます?!そのような者、あの場所にはっ…!!」
ふとフランツが顔をあげる。
「その場にいなかった貴殿に、なぜそのようなことが言い切れる?」
冷ややかな声がブリミエルに飛ぶ。
声の冷たさからディアナはフランツの怒りを感じた。
≪倒れた人は、とても大事な人だったのかしら…≫
ディアナはフランツの心が傷んでいるような気がして
あがくのをやめることにした。
ぴたりと動くのをやめたディアナにフランツは微笑した。
演技ではない、微笑だった。フランツは腕をそっと緩めた。
「皇子の愛され方はすごいのですよ。
それはもう・・。同席はお止申し上げたのですが、一時もおそばから離されずなのです。」
「ウェ、ウェルスター卿!」
ブリミエルが唇を噛む。
「そうだろう?私はこの者が可愛くて仕方がなくてね。」
ぎゅっと抱きしめては頬に唇を押し当てそうになる。
「い・・いや・・」
「そうか、人前ではいやか。可愛い人。」
フランツの本気か演技かわからない口づけをディアナは精一杯顔をそらしてかわしていた。
ウェルスターの嘆きはまんざら嘘でもなかったのだが・・。
ウェルスターはブリミエルに詰め寄る。
「さあ、その怪しい者たちをもう一度詰問いたしましょう。
虚偽の申告、ましてや王族を陥れようとするなどとんだ大罪!
しかるべき処置をするべきです。見過ごすことはできません。」
「そやつらを操っている者はさらに極刑を受けるべきです。」
ブリミエルがあとずさる。
「黒幕を引きずり出してやりましょう。」
「そ、、そんな者はおらん!
何かの間違いかもしれん、私のほうで今一度、問いただしてみることに致そう。」
しどろもどろ、あたふたしながらブリミエルは足早に兵を引き連れ退散していった。
ひきあげつつ、ブリミエルはぎりぎりと奥歯をかみしめていた。
服の裾を持つ手に力がこもる。
≪忌々しい!!フ・・フランツ皇子め・・っ!!くぅ・・・っ!!!
これでうっとうしい存在を排除できると思ったのに・・っ!!
くぅ・・っ!!!次こそは・・次こそは、宰相の座もこの国も!私のものにしてくれるわ・・!≫
口元をゆがめ、不気味に笑うブリミエルだった。
どこからそんな話を聞かれたのか?
レデオン卿が倒れたのもつい先ほどのこと。
事の詳細を把握されるのが早すぎるような、、
まるでご存じだったような早さではありませんか?」
扉に立つブリミエルにフランツの薄く青い瞳が
刺すように向けられる。
「レデオン卿が毒に倒れたことも、
私はつい先ほど侍医から報告を受けたばかり。
そのこともご存じとは、、もしや
すでに何の毒だったかもご存じなのか?・・まさか!」
フランツがわざとらしい声で言う。
ブリミエル卿の顔がひきつる。
「卿に私たちが二人だったと告げたものは誰か?
その者達に後ろで糸をひく者がいるのでは?!」
「なるほど!」
アイザックが相槌を打つ。
「ではその者達を即刻捕らえ問い詰めましょう!」
ウェルスターとアイザックがブリミエルににじり寄る。
「ブリミエル卿、その者達は今どこに?!」
「ブリミエル卿!」
屈強な男たちに詰め寄られ、額に汗をにじませるブリミエル。
「い・・いや、私はですからこうして
皇子様のお話を伺いに来たのであって・・。」
「聡明な貴殿のこと、私ではないとお判りで、それを確かめに来られたのでしょう?
二人きりの時に相手をどうにかするなど、すぐに明るみに出るようなこと。」
フランツの凛とした声がブリミエルの反発を打ち消した。
聞く者に響いてくる声だった。
ディアナの全身にもぴりぴりとフランツの声が響いた。
「それに、」
フランツが後ろに隠していた、頭から布をすっぽりかぶった人物を胸に抱き入れる。
皇子のほうを向かされていて、他の者には姿が見えない。
「あの場所に私はひとりではなかった。」
ディアナの身体に回された皇子の腕にぐっと力がこもる。
あ・・。ディアナは息をつまらせた。
皇子の胸にぎゅうっと抱き入れられ、皇子の香りを吸いこんでしまった身体が奥から火照ってくるようだった。
≪いやだ、離れなきゃ…≫
あらがおうとするが、右腕が痛くて、片腕だけでは逃れられない。
「逃げないで。」
顔をちかづけ、囁くようなフランツの声がした。
さらさらとやわらかな金色の髪がディアナにふりかかる。
フランツの唇がそっとディアナの額に触れる。
やわらかな感触。
大きな瞳をさらに見開いているディアナの頬をそっとなでる大きな掌。
「私はこの娘にほれ込んでいてね。
愛しくてたまらない・・。片時もそばを離れていられない・・。
レデオンとの話し合いにも、この娘を同席させていたのだよ。」
フランツが口元をあげる。
「レデオンもすごく驚いていたよ。私の溺愛ぶりにね。」
愛おしそうにその娘を両腕に抱きしめる。
「何、、何を申されます?!そのような者、あの場所にはっ…!!」
ふとフランツが顔をあげる。
「その場にいなかった貴殿に、なぜそのようなことが言い切れる?」
冷ややかな声がブリミエルに飛ぶ。
声の冷たさからディアナはフランツの怒りを感じた。
≪倒れた人は、とても大事な人だったのかしら…≫
ディアナはフランツの心が傷んでいるような気がして
あがくのをやめることにした。
ぴたりと動くのをやめたディアナにフランツは微笑した。
演技ではない、微笑だった。フランツは腕をそっと緩めた。
「皇子の愛され方はすごいのですよ。
それはもう・・。同席はお止申し上げたのですが、一時もおそばから離されずなのです。」
「ウェ、ウェルスター卿!」
ブリミエルが唇を噛む。
「そうだろう?私はこの者が可愛くて仕方がなくてね。」
ぎゅっと抱きしめては頬に唇を押し当てそうになる。
「い・・いや・・」
「そうか、人前ではいやか。可愛い人。」
フランツの本気か演技かわからない口づけをディアナは精一杯顔をそらしてかわしていた。
ウェルスターの嘆きはまんざら嘘でもなかったのだが・・。
ウェルスターはブリミエルに詰め寄る。
「さあ、その怪しい者たちをもう一度詰問いたしましょう。
虚偽の申告、ましてや王族を陥れようとするなどとんだ大罪!
しかるべき処置をするべきです。見過ごすことはできません。」
「そやつらを操っている者はさらに極刑を受けるべきです。」
ブリミエルがあとずさる。
「黒幕を引きずり出してやりましょう。」
「そ、、そんな者はおらん!
何かの間違いかもしれん、私のほうで今一度、問いただしてみることに致そう。」
しどろもどろ、あたふたしながらブリミエルは足早に兵を引き連れ退散していった。
ひきあげつつ、ブリミエルはぎりぎりと奥歯をかみしめていた。
服の裾を持つ手に力がこもる。
≪忌々しい!!フ・・フランツ皇子め・・っ!!くぅ・・・っ!!!
これでうっとうしい存在を排除できると思ったのに・・っ!!
くぅ・・っ!!!次こそは・・次こそは、宰相の座もこの国も!私のものにしてくれるわ・・!≫
口元をゆがめ、不気味に笑うブリミエルだった。