うめき声がした気がした。
突然目の前が明るく開けて、はっとフランツは我に返った。
頭上のシャンデリアは豪華な光を輝かせている。
振り返ると、レデオン卿が胸を押さえ、顔を下に向けているところだった。
『この光景は・・以前に見た・・』
ぐはっ、とレデオン卿は吐血し、その血が自分のシャツの胸にべっとりと
ついた。
「レデオン卿!どうした?しっかりしろ!」
勝手に言葉が口をついてでる。
勝手に身体が動いている。
思考はこの状況にとまどっているのに、私は、、私は、
これも夢だろうか?自分が経験してきたことを
もう一度夢に見ているのだろうか?
くずおれるレデオン卿、手をついたテーブルから
水差しが落下する。
がしゃんっ!!
けたたましくガラスが割れた。
「きゃーーーっっ!!!!!」
女の叫び声。
フランツはカーテンのほうを見た。
そこにいるものをフランツは知っていた。
『まさか・・』
期待のこもる眼差しを自分はしていたのかもしれない。
「フランツ皇子っ?!ご無事ですかっ!?」
ウェルスターが飛び込んできた。
全てがあの時の通りだった。
過去が繰り返されているのか?
レデオン卿のそばに片膝をついた私に
ウェルスターが駆け付けた。
「ウェルスター!すぐに侍医を呼べ!!
突然胸を押さえて吐血したかと思うと倒れた。手を貸す暇もなかった。
すぐ侍医に診せろ。まだ息をしている。すぐにだ!」
「レデオン卿!お気を確かに!」
数人の兵士がレデオン卿を運び出していく。
、、、全てがそのままのようだった。
「・・皇子?」
そうだ、私はこの時、そこに誰かがいることを確信していた。
なぜかはわからないけれど。
私は足早に、けれどもそっとカーテンに近づいていった。
分厚いカーテンが動いた。
すっとカーテンをめくりあげた。
「きゃっ!」
そこに居た。ディアナだった。
ディアナがそこに居た・・。
黒髪、黒い瞳の少女が目を見開いて立ち尽くしていた。
「ぁ・・わ・・わた・・わたし・・・」
「きみは・・!」
その後が声に出せない。
何かが喉に膜を張ったかのように。。
、、ディアナだとわかっているのに!
「わたし・・」
少女は蒼白な顔をしていた。
声が出せないなら、そばに行って、その身体を抱きしめてやりたかった。
ディアナのそばに寄ろうとする私の前に、ウェルスターがその身を滑らせた。
彼は私を守るように立っていた。
「フランツ皇子、正体の知れない者です。お近づきになりませんように。」
『ちがう、私は知っている、ディアナだ』と言いたかった。
それなのに、私の口も身体も思うようには動かなかった。
「きみは・・私はどこかできみをみたことが・・」
私はそんなことを言っていたのか。違うことを言いたいのに。
私はお前を知っている、と。
「ウェルスター、レデオンは突然胸の痛みを訴えて倒れたのだ。この少女のせいではないだろう。」
「どこかで会ったかな?」
差し出された手を取らず、ぶるぶると首を横に振る少女。
恐怖の為か身体が震えている。
『私はきみを知っている。』
「先ほどの彼が倒れるところを見たのかい?」
少女は小さく頷いた。
「捕まえろ!」少女はぎゅっと身を縮こまらせた。
『だめだ!傷つけるな!』
不安をめいっぱいに溜めた黒い瞳、私の瞳とぶつかった。
とっさに窓の外へ少女は身を投げ出していた。
暗闇へ走り出していく。もう後姿は見えない。
『ディアナ・・!私は、同じことの繰り返しをまた見なければならないのか・・?』
自分の口も身体も勝手に動いて、『あの時』を繰り返し続けている。
「やめないか!彼女は敵ではない!傷つけてはならない!!」
「フランツ皇子、なぜですか?皇子はあの少女をご存じなのですか?
知らない者なのでしょう?誰かの手下で皇子を陥れようとしているのかもしれないのですよ?」
「ウェルスター、それはありえない。何故だかわからないが・・そうではないはずだ。」
私はこの時知っていたから、きっと確信していたんだろう・・今ならそう思えた。
「彼女を無傷で保護しろ。」
ウェルスターは目を見張った。
「後で事情を説明していただきますよ。」
ウェルスターがひらりとマントを翻し、駆け出して行った。
アイザックも続いた。
私は必至で声にならない声を上げていた。
『傷つけてはならない!ディアナを傷つけるな!』・・と。
もう一度繰り返している過去なのか、これが現実なのか、
それももうどちらでもよかった。
ディアナを傷つけたくなかった。
彼女のいるここが現実であればいいと思った。
もう一度彼女を失いたくなかった。。
突然目の前が明るく開けて、はっとフランツは我に返った。
頭上のシャンデリアは豪華な光を輝かせている。
振り返ると、レデオン卿が胸を押さえ、顔を下に向けているところだった。
『この光景は・・以前に見た・・』
ぐはっ、とレデオン卿は吐血し、その血が自分のシャツの胸にべっとりと
ついた。
「レデオン卿!どうした?しっかりしろ!」
勝手に言葉が口をついてでる。
勝手に身体が動いている。
思考はこの状況にとまどっているのに、私は、、私は、
これも夢だろうか?自分が経験してきたことを
もう一度夢に見ているのだろうか?
くずおれるレデオン卿、手をついたテーブルから
水差しが落下する。
がしゃんっ!!
けたたましくガラスが割れた。
「きゃーーーっっ!!!!!」
女の叫び声。
フランツはカーテンのほうを見た。
そこにいるものをフランツは知っていた。
『まさか・・』
期待のこもる眼差しを自分はしていたのかもしれない。
「フランツ皇子っ?!ご無事ですかっ!?」
ウェルスターが飛び込んできた。
全てがあの時の通りだった。
過去が繰り返されているのか?
レデオン卿のそばに片膝をついた私に
ウェルスターが駆け付けた。
「ウェルスター!すぐに侍医を呼べ!!
突然胸を押さえて吐血したかと思うと倒れた。手を貸す暇もなかった。
すぐ侍医に診せろ。まだ息をしている。すぐにだ!」
「レデオン卿!お気を確かに!」
数人の兵士がレデオン卿を運び出していく。
、、、全てがそのままのようだった。
「・・皇子?」
そうだ、私はこの時、そこに誰かがいることを確信していた。
なぜかはわからないけれど。
私は足早に、けれどもそっとカーテンに近づいていった。
分厚いカーテンが動いた。
すっとカーテンをめくりあげた。
「きゃっ!」
そこに居た。ディアナだった。
ディアナがそこに居た・・。
黒髪、黒い瞳の少女が目を見開いて立ち尽くしていた。
「ぁ・・わ・・わた・・わたし・・・」
「きみは・・!」
その後が声に出せない。
何かが喉に膜を張ったかのように。。
、、ディアナだとわかっているのに!
「わたし・・」
少女は蒼白な顔をしていた。
声が出せないなら、そばに行って、その身体を抱きしめてやりたかった。
ディアナのそばに寄ろうとする私の前に、ウェルスターがその身を滑らせた。
彼は私を守るように立っていた。
「フランツ皇子、正体の知れない者です。お近づきになりませんように。」
『ちがう、私は知っている、ディアナだ』と言いたかった。
それなのに、私の口も身体も思うようには動かなかった。
「きみは・・私はどこかできみをみたことが・・」
私はそんなことを言っていたのか。違うことを言いたいのに。
私はお前を知っている、と。
「ウェルスター、レデオンは突然胸の痛みを訴えて倒れたのだ。この少女のせいではないだろう。」
「どこかで会ったかな?」
差し出された手を取らず、ぶるぶると首を横に振る少女。
恐怖の為か身体が震えている。
『私はきみを知っている。』
「先ほどの彼が倒れるところを見たのかい?」
少女は小さく頷いた。
「捕まえろ!」少女はぎゅっと身を縮こまらせた。
『だめだ!傷つけるな!』
不安をめいっぱいに溜めた黒い瞳、私の瞳とぶつかった。
とっさに窓の外へ少女は身を投げ出していた。
暗闇へ走り出していく。もう後姿は見えない。
『ディアナ・・!私は、同じことの繰り返しをまた見なければならないのか・・?』
自分の口も身体も勝手に動いて、『あの時』を繰り返し続けている。
「やめないか!彼女は敵ではない!傷つけてはならない!!」
「フランツ皇子、なぜですか?皇子はあの少女をご存じなのですか?
知らない者なのでしょう?誰かの手下で皇子を陥れようとしているのかもしれないのですよ?」
「ウェルスター、それはありえない。何故だかわからないが・・そうではないはずだ。」
私はこの時知っていたから、きっと確信していたんだろう・・今ならそう思えた。
「彼女を無傷で保護しろ。」
ウェルスターは目を見張った。
「後で事情を説明していただきますよ。」
ウェルスターがひらりとマントを翻し、駆け出して行った。
アイザックも続いた。
私は必至で声にならない声を上げていた。
『傷つけてはならない!ディアナを傷つけるな!』・・と。
もう一度繰り返している過去なのか、これが現実なのか、
それももうどちらでもよかった。
ディアナを傷つけたくなかった。
彼女のいるここが現実であればいいと思った。
もう一度彼女を失いたくなかった。。