かくして、私が『伝説の救い』だという話はあっという間に広まった。
それもたったの一晩で。。
翌朝にはマレーさんが伝えてくれるいろんな説が持ちきりで
私はあんぐり口を開けてしまうのだった。
妖艶な美女だとか、荒ぶる争いの女神だとか、半人半竜の異形の者だとか、
死を超越して生きながらえているとか、、、。
マレーさんはどの話もおかしそうに笑いながらしていた。
女だってこと、青い玉を持っているということ、それだけは合っているようだけど
どの話もどうしてそんなに違う話になってしまってるのだろう。
鏡に映る『妖艶』とはほど遠い自分を見て苦笑する。
「私がその救いだってわかったら、普通すぎてみんながっかりするのかな。。」
マレーさんと目を合わせて苦笑する。
「ディアナ様はふつうではありませんよ。」
「え?」
「とても可愛らしい、花のような方です。」
にこっと笑ってくれる。
「私はディアナ様でよかったです。」
「マレーさん、、、。」
じんわりと目頭が熱くなった。
「あら、まぁ、、ダメですよ、ディアナ様。お化粧が。」
「わー、、そうだった!」
ザンジュールの大臣たちの間にも、うわさはあっという間に広まっていた。
翌日の昼過ぎには、大臣たちの代表の幾人かがフランツの執務室を訪れ
説明を求めていた。その中にブリミエル卿の姿もあった。
そうなることを予見していた皇子のほうでは、
レデオン卿とウェルスターと顔を並べ、執務室で大臣らの到着を
待ち構えていたのだった。
説明を、とはやる大臣らの前で、先に釘を打ったのは
もちろんフランツ皇子らのほうだった。
「先日はディアナのこと、真実の姿を紹介できなくて残念だった。」
レデオン、ウェルスターも一応に渋い顔をしてみせている。
「伝説の救いの安全を第一に確保したかったので、
あの時は彼女の紹介をやむを得ず見送らざるを得なかった。
ブリミエル卿も知っているだろう、レデオン卿が倒れた時のことを?
そう、ディアナが現れたのはまさにあの時だった。
私とレデオンの前に。しかしその場でレデオン卿が倒れた!
もしかすると、、あれは初めから何者かが伝説の救いを狙っていたのかもしれない、私たちはそう考えてね。
そうだろう?レデオン卿。」
「ええ、その通りです。」
「それゆえ、毒を仕込んだもの、伝説の救いを予見して亡き者にしようと、、
ゆくはこの国とその王の命も狙っているかもしれない者、それが誰なのかを、、見つけ出すまで、伝説の救いが現れたことは伏せておこうと決めたのだ。わかるだろう?ブリミエル卿。」
「ぉぉ、、そうでしたか!」
「いや、それはなんという、、。」
「その毒を仕込んだものは見つかったのですか?」
「見つかったので、伝説の救いを明らかにされたのですね?」
ブリミエルの額に脂汗が光っている。
フランツ皇子の視線に応え、ウェルスターが応える。
「そちらは継続しております。大方、絞れており、あとひと息のところです。」
大臣たちからどよめきが上がる。
ブリミエル卿は倒れんばかりに真っ青な顔色をしている。
「黒幕がほぼ絞れている状況なので、ディアナを私のそばに置くのが
より安全かと思う。騎士団の保護下にも置けるのでね。
シラーとの紛争制圧にも救いの加護があればより万全だろう。
それで今回、急ではあったが彼女の正体を明かすこととした。」
「なるほど。」
「さようでしたか。」
「その救いの正体は確かなのですかな?」
納得やどよめき、思慮の声が混じって聞こえる。
「もちろん、それらについては既にウェルスター卿が徹底的に
調査済みだ。」
「しかし、、伝説とは、、。」
フランツはその言葉を待っていたとばかりに応じる。
「伝説の成す業をその目で確かめられればよいであろう?」
フランツは不敵の笑みを口元に浮かべた。
「このシラーとの紛争、それを制圧して私が無事王位を継ぐことができれば
伝説の救いはその役目を果たすことになるのではないか?
青い竜、その救いは我が国とその王を守る者。
彼女がそれかどうか、疑っているよりも現状を見守るべきと思うが。」
大臣らに意見を問うというより、否を言わせぬ雰囲気でフランツは続ける。
「よって、私はここにディアナを伝説の救いとして我が国に迎え、
丁重にその身の安全を確保することを決定した。
国王には承認を得ている。みなもそのように。以上。」
そこまで言うと、ウェルスター卿が「公務の続きがあるので」と
大臣らを丁重に執務室から追い出し、『伝説の救い』承認の件は終了された。
☆☆☆
「フランツ皇子、随分ご機嫌が宜しいようですな?」
「ブリミエル卿の顔色、レデオン卿も見ただろう?」
「そうですね。ええ、見ました。あれではまるで白状しているようなものでした。」
レデオン卿は一息ついて口を開いた。
「さて、ブリミエル卿は次にどんな手に打ってくるでしょうか。。」
「ブリミエル卿には騎士団の者から数名、継続して見張りを付けております。」
ウェルスターが告げた。
「そちらも見守ろう。」
「ディアナ様のほうは大丈夫ですかな?」
「それについてはより保護しやすいよう手を打った。」
≪彼女はきっと顔を真っ赤にして驚くだろう。≫
フランツには、精一杯抵抗するディアナの顔が浮かんでいた。
それもたったの一晩で。。
翌朝にはマレーさんが伝えてくれるいろんな説が持ちきりで
私はあんぐり口を開けてしまうのだった。
妖艶な美女だとか、荒ぶる争いの女神だとか、半人半竜の異形の者だとか、
死を超越して生きながらえているとか、、、。
マレーさんはどの話もおかしそうに笑いながらしていた。
女だってこと、青い玉を持っているということ、それだけは合っているようだけど
どの話もどうしてそんなに違う話になってしまってるのだろう。
鏡に映る『妖艶』とはほど遠い自分を見て苦笑する。
「私がその救いだってわかったら、普通すぎてみんながっかりするのかな。。」
マレーさんと目を合わせて苦笑する。
「ディアナ様はふつうではありませんよ。」
「え?」
「とても可愛らしい、花のような方です。」
にこっと笑ってくれる。
「私はディアナ様でよかったです。」
「マレーさん、、、。」
じんわりと目頭が熱くなった。
「あら、まぁ、、ダメですよ、ディアナ様。お化粧が。」
「わー、、そうだった!」
ザンジュールの大臣たちの間にも、うわさはあっという間に広まっていた。
翌日の昼過ぎには、大臣たちの代表の幾人かがフランツの執務室を訪れ
説明を求めていた。その中にブリミエル卿の姿もあった。
そうなることを予見していた皇子のほうでは、
レデオン卿とウェルスターと顔を並べ、執務室で大臣らの到着を
待ち構えていたのだった。
説明を、とはやる大臣らの前で、先に釘を打ったのは
もちろんフランツ皇子らのほうだった。
「先日はディアナのこと、真実の姿を紹介できなくて残念だった。」
レデオン、ウェルスターも一応に渋い顔をしてみせている。
「伝説の救いの安全を第一に確保したかったので、
あの時は彼女の紹介をやむを得ず見送らざるを得なかった。
ブリミエル卿も知っているだろう、レデオン卿が倒れた時のことを?
そう、ディアナが現れたのはまさにあの時だった。
私とレデオンの前に。しかしその場でレデオン卿が倒れた!
もしかすると、、あれは初めから何者かが伝説の救いを狙っていたのかもしれない、私たちはそう考えてね。
そうだろう?レデオン卿。」
「ええ、その通りです。」
「それゆえ、毒を仕込んだもの、伝説の救いを予見して亡き者にしようと、、
ゆくはこの国とその王の命も狙っているかもしれない者、それが誰なのかを、、見つけ出すまで、伝説の救いが現れたことは伏せておこうと決めたのだ。わかるだろう?ブリミエル卿。」
「ぉぉ、、そうでしたか!」
「いや、それはなんという、、。」
「その毒を仕込んだものは見つかったのですか?」
「見つかったので、伝説の救いを明らかにされたのですね?」
ブリミエルの額に脂汗が光っている。
フランツ皇子の視線に応え、ウェルスターが応える。
「そちらは継続しております。大方、絞れており、あとひと息のところです。」
大臣たちからどよめきが上がる。
ブリミエル卿は倒れんばかりに真っ青な顔色をしている。
「黒幕がほぼ絞れている状況なので、ディアナを私のそばに置くのが
より安全かと思う。騎士団の保護下にも置けるのでね。
シラーとの紛争制圧にも救いの加護があればより万全だろう。
それで今回、急ではあったが彼女の正体を明かすこととした。」
「なるほど。」
「さようでしたか。」
「その救いの正体は確かなのですかな?」
納得やどよめき、思慮の声が混じって聞こえる。
「もちろん、それらについては既にウェルスター卿が徹底的に
調査済みだ。」
「しかし、、伝説とは、、。」
フランツはその言葉を待っていたとばかりに応じる。
「伝説の成す業をその目で確かめられればよいであろう?」
フランツは不敵の笑みを口元に浮かべた。
「このシラーとの紛争、それを制圧して私が無事王位を継ぐことができれば
伝説の救いはその役目を果たすことになるのではないか?
青い竜、その救いは我が国とその王を守る者。
彼女がそれかどうか、疑っているよりも現状を見守るべきと思うが。」
大臣らに意見を問うというより、否を言わせぬ雰囲気でフランツは続ける。
「よって、私はここにディアナを伝説の救いとして我が国に迎え、
丁重にその身の安全を確保することを決定した。
国王には承認を得ている。みなもそのように。以上。」
そこまで言うと、ウェルスター卿が「公務の続きがあるので」と
大臣らを丁重に執務室から追い出し、『伝説の救い』承認の件は終了された。
☆☆☆
「フランツ皇子、随分ご機嫌が宜しいようですな?」
「ブリミエル卿の顔色、レデオン卿も見ただろう?」
「そうですね。ええ、見ました。あれではまるで白状しているようなものでした。」
レデオン卿は一息ついて口を開いた。
「さて、ブリミエル卿は次にどんな手に打ってくるでしょうか。。」
「ブリミエル卿には騎士団の者から数名、継続して見張りを付けております。」
ウェルスターが告げた。
「そちらも見守ろう。」
「ディアナ様のほうは大丈夫ですかな?」
「それについてはより保護しやすいよう手を打った。」
≪彼女はきっと顔を真っ赤にして驚くだろう。≫
フランツには、精一杯抵抗するディアナの顔が浮かんでいた。